講習会「土地規制法が地方自治にもたらすもの」  ~なぜ土地規制法の廃止をめざすのか~  に参加して

7月5日(金)午後6時から、かながわ県民センター2階ホールで開催。

講師は、「土地規制法を廃止する全国自治体議員団」の松戸市議会議員の岡本ゆうこさん。

主催は、当会も参加している神奈川3区野党共闘を求める市民の会が連携している「戦争させない横浜市民ネットワーク」

参加したメンバーの報告です。

2021年6月21日、自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党の各党の賛成多数で可決された「重要土地等調査規制法」(わかりやすく土地規制法と表すことも)を、その立法過程から説明し、そしてこの法律が私たち市民生活に、自治体にどんな影響を及ぼすのか、私たちは何をしなければならないか、を講師の岡本さんから具体的に聞きました。

岡本さんは、松戸市にある「陸上自衛隊松戸駐屯地」が「重要施設周辺及び国境離島などにおける土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律(重要土地等調査規制法)」に基づく重要施設として指定されるのではと、この法案の審議段階から法案の廃止に向けて全国の自治体議員と連携して動いていたとのこと。

以下、講演内容の重要と思われる部分です

<そもそも、立法事実がない!>

この法律は、国が基地や原発など安全保障上重要とする土地の周囲1km範囲や離島などを「注視区域」に指定して政府が土地の利用状況や所有者の調査をできるものとしています。

最初、法案審議で政府は、「北海道千歳の航空自衛隊基地近隣の土地、長崎県対馬市の海上自衛隊施設の周辺の土地を外国資本が買っている。安全保障上、地域住民に不安がある」からこの法案は必要であると答弁していましたが、こうして事実はないことが確認され、更には「防衛省が全国637施設の近隣土地を調査した」結果、78,920人の所有者のうち7筆のみが外国籍で「現時点で自衛隊の運用に支障が起きているということは確認されていない」という答弁に変わりました。

<総理大臣が注視区域を指定する!>

注視区域:①重要施設周辺概ね1kmの範囲 ②国境離島の区域

重要施設:①防衛施設 ②海上保安庁の施設 ③生活関連施設 の中で機能阻害行為を特に防止する必要がある施設

これらは、国会の審議を経ることがなく政令でつまり政府が決めることができます。

「注視区域」に指定されると重要施設に対し「機能阻害行為」のおそれがあることを判断するために、区域内の建物の所有者、居住者だけではなく仕事や活動で往来している人々についても個人情報を調査することになっています。

<地方自治体は、個人情報を総理大臣に提供しなければならない!>

地方自治体が有する住民情報:住所、氏名、家族構成、資産、所得、学校関係、人種、社会的身分、病歴、犯罪歴など

こうした情報を国から求められれば、地方自治体は提供する義務があります。又、対象の住民らには「あなたの情報を提供しました」とは言えないことになっています。

<重要施設の生活関連施設の範囲がどこまで広がるか曖昧!>

この法律の特徴として、たった28条の条文の中身はあまりにも曖昧で総理大臣がすべて決めることができるような法律になっています。条文の中身には「◯◯等」が約140箇所、「その他」が22箇所など、具体的なことはすべて政令で決めてしまえるようになっています。

今は、「生活関連施設」は、「原発や自衛隊が共用する民間空港とされたが、鉄道施設など現時点で想定していないとされるものも、曖昧な条文から排除されていない」という指摘も法案に反対する立場の議員の意見があります。

<全国どこでも全住民が当事者になる!>

法律が施行されてから、現在まで4回の指定が行われ、横浜ノースドックもこの5月に指定されましたが、防衛関係施設が509箇所、海上保安庁関係施設が16箇所、原発関係施設が23箇所、空港が9箇所、国境離島が85箇所となっています。政令で定めるので、内閣が勝手に決められます。そして、どこでも調査対象になりうることを政府は認めています。

<地方自治を無視する!基本的人権を無視する!>

「重要施設の機能を阻害するのではないか」という疑いのもとに、個人情報が調査・収集され監視されることが可能となります。プライバシー権、思想信条の自由、財産権などの基本的人権にはお構いなしの憲法違反!国の指示のもと、地方は情報提供しなければなりません。地方より国が上、地方は国の手足となって動くのが当たり前という戦前と同じ考え方の法律になっているのでは。

<私たちは、これから何をする?>

まずは、このことを1人でも多くの人に知ってもらうことを!

学習会でも、ワークショップでも、自治会や町内会でも

自治体に対応を聞いてみる(土地評価額が下がり、財政に影響があることも)

SNSで発信する (講演はユーチューブで配信しています)

 

講演を聞き終えて、背筋が寒くなりました。 重要施設の③生活関連施設の指定をどんどん拡大していくことで何が起こるのか、何ができるのか、注視区域の概ね1kmを伸ばしていくとどうなるか・・・・・政令で全て決めていくことができる法律です。この法律の本当の目的は、国民の個人情報の調査・収集と監視にあるとしか思えませんでした。

 

横浜市長に4月30日に、「本市における重要土地等調査規制法注視区域の指定について」という陳情書を「戦争させない横浜市民ネットーワーク」で提出しました。

又、横浜市会にもアクションを起こしていく必要があるとして、準備を進めています。